陽炎

終戦から1年を経た東京銀座の街に陽子はたたずんでいた。
戦争で失ったもの…義両親と明治から続けてきた蕎麦屋…一人娘の花梨。
愛する夫は硫黄島に行ったまま戻ってこない。
安否の分からぬ夫に代わり店を守る決意を固める陽子に、幼馴染のすみ子は「喫茶店」
として復活させようと提案する。
大阪大空襲ですべてを失った義姉の良子、妹の都、そして、
すみ子の呼びかけで集まった女性たちと共に再建の日々が始まる。
国による「区画整理」、やくざたちの地権争い。この店と土地を守るため必死に戦う陽子たち。
そんな中、謎の男東条が現れ陽子に土地の売却話を持ち掛ける。
戦争の爪痕が色濃く残る東京銀座の片隅で女たちの戦いが始まる。